第1422話 「以意行気」の真意
- 2019/07/12
- 13:21

世の中ではこのテーマ程に誤解がないと思います。どうしても、脳の指令によって人間の気が動くと解釈する人が一番多いですね。しかし、果たして気が人の意念だけでその存在がいまだに医学的に検証できていない気を動かすことは可能かというと、その結論は当然微妙との一言になります。

太極の研究では通常、人間の筋肉と筋肉の間にある経絡がそれぞれの筋肉の緩みによって徐々に「気」、または「内勁」との言葉を使っていますが、実際に体内の流れを本格的に感じるようになるのはどんなに頑張っても十数年はかかります。誰でも最初の内には太極拳の動作を覚えるだけで精一杯でしょう。慢架の練習の際では次の動作はなんだろうか、次の動作の注意点はなんだろうかと脳は高度に緊張するかと思います。もしも、誰かが最初のうちに太極拳の名前を暗記したくない人がいれば、この人はおそらく偉人(異人?)ですね。私は太極拳慢架を学ぶ時に先代の二人は太極拳一式一式の名称にまったくふれませんでした。それは今になってやっと理解できたのですが、先代は少しでも脳の回転を少なくした状態での練習を望んだわけですね。
一方、世間ではどうしても脳で気を動かすことを主張しています。しかも、じ~としていて、脳で創造すれば気が動くと解釈している人もいますね。太極の原理からすると一定レベルの筋肉の緩みはかなりの動きによる訓練しなければ決して得られないことからすると、体が全然緩んでいない状態で動かないままの意念では気は当然のように気は動き出してくれないか、経絡がいびつ状態になって体が壊れることも多いです。太極拳のことがほぼわからない人でもある程度の老荘思想を勉強されたことがあれば、タオイズムは自然体を大切にすべきとのことが理解できているはずです。脳の意念では体をこき使ってしまうことも近代医学ではいろいろと研究されてきました。精神的な病の原因が数千種類あると言われている中、中国古代哲学は脳の指令よりも体の自然な補い合いを提唱しています。よって、本来の太極拳の考え方は意は脳の指令よりも体の調和からくる脳のパターンになります。
具体的に申すと、体は一定の緩みを得て経絡は自然と気が生まれ、一定の動作と共に気も自然に動きます。もちろん、気が高度に自由になれば、じ~としても気が自然に動くことになります。まあ、これはかなり年数がかかりますね。何故かというとこれは、かなり高い気の密度と自由度が必要になります。太極の上級者はほどんど動かない状態で発勁や化勁が出来るのもこれです。その時は脳が指令を出すのではなく、脳が体の陰陽五行が調和されたパターンの反応しただけのことになります。「以意行気」は脳が体の最もよい状態をパターン化された結果です。私達の毎日の太極慢架練習は毎日の自身のバランスの修正になっています。体の状態が脳が記憶しているパターンと異なれば当然、気が上手く自然に動けなくなります。
色々な他所様の動画を拝見していると、体がかなり硬いのにじ~として気を動かそうとしますが、気が動き出していなければ、もっと厳しく言うと気がなければどうやって動かすのでしょうかね。他に、「落股垂臀」もできていないのに「動かない」推手をやっている人がいますが、「虚実分明」の原理も間違っているのに、どうしてこのような高度な技ができるのでしょうか。
太極の以意行気はかなり長い訓練をしないといけません。それを速成しようと必ず何かの問題が起きます。言語道断と本末転倒はだた体を壊すだけです。くれぐれもご注意くださいませ。


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