第1587話 徹底的な身体操作
- 2019/12/22
- 08:22

今日の太極に関する色々な形はかなり本来の概念から離れていることは多くの人に語られています。知り合いの会社役員やその他の太極とまったく関係ない人間でも知っているように、色々な原因で太極はスポーツされたり、外家拳化されたりしています。いわゆる、内家拳は人間の内面的な状態を徹底的に変えていかなければ内家拳とは言えないです。力で相手をねじ伏せるならば、太極ではなくてもよいです。
私が中国で太極を教えていた頃から色々と外家拳の方も太極練習を希望されていました。ほとんどの方は外家拳やその他の格闘技で怪我をして、リハビリテーションとして病院に勧められています。先代馬岳梁は医者でもある為に多くの紹介がありましたね。最初は基本的にリハビリテーションとして太極を練習していましたが、徐々に自身の体の内面状態を変えていく楽しさからか、または推手練習などで太極の上級者の独特な優れている体の状態に惚れたのだろうか、外家拳や格闘技をこのままやめてしまう方もかなり多いです。中国と言う国では日本の整形外科に当たる「傷科」医者の手技はかなり上手です。それでも、中国の医者は太極をリハビリテーションとして人々に勧めています。もちろん、中国の「傷科」は日本と違って鍼灸も積極的に勧めています。当然、医者が進めるリハビリテーションとしての太極もスポーツではなく、伝統的なものになりますね。中には制定太極拳で怪我をして、医者による色々な治療の後に勧められるのは伝統太極によるリハビリです。そして、リハビリのつもりで得た結果は、後の制定試合で成績が上がり、選手が引退後に伝統太極に入門する人がかなり多いです。中には途中で選手を引退してこのまま伝統太極の世界に入るケースもあります。
逆に、中国では伝統太極はかなりの分裂が生じており、6大流派の支流も主流も色々な近代的な内家拳の考え方に影響されて、太極と関係ない考え方が徐々に太極文化を蝕んでいるのは事実です。封建社会的な伝授では大昔から多くの太極文化を失わせてしまいました。今日では伝統太極の練習でも何故か「起勢」からではなく、「開歩」からスタートしている教室がかなり増えましたね。また、伝統太極拳なのに、音楽をかけての練習も増えました。まあ、私が教えていた公園教室のすぐ隣では必ず大音量で制定太極拳を練習するグループが複数存在していましたね。昨今ではもはや、伝統も制定も一定レベルではかなり近付いてきています。これが私の心配事ですね。
太極は本来、自身の体内部を変えていく作業です。人は鍛えれば誰でも一定の筋肉がつき、硬く鍛えた筋肉はいずれも衰えます。これは筋トレのプロも知っているはずですね。太極は本来の骨と骨の関係を変える訓練になります。骨と骨が虚実関係になっていれば、その部分もきっと気が自然に流れますね。人付き合いも実は同様です。師馬岳梁は晩年、どんな人間とも衝突が起きないように接していましたね。実と実の間に虚があるようにと、これは、今はなき酒井多賀志先生も実は何故か、太極のように人と当たっていました。酒井先生は私の拙作の刊行記念パーティーの太極拳練習の時間で皆と一緒に懸命に太極拳をやっているお写真が残されています。先生はもし、全精力を音楽に注いでいなければきっと、太極拳の巨匠にもなったと確信しております。


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