第247話 先手後手なし
- 2016/04/26
- 23:47

囲碁では先手何目、後手何目という計算があります。
一部の伝統を守る空手では、完全先手なしというスタイルを守っています。その他でも一部の日本武道は先に手を出さないことで、実戦の中で相手の欠点を狙っていけば勝機があると、私が見た感覚ではおそらくこうなるのではないかと思います。もちろん、これはあくまでもこの日本武道の門外漢の感覚です。間違っていたら、是非とも多くの先生方が正してくだされば幸いに存じます。
しかし、多くの中国武術ならば、先手を重んじることが基本です。「天下武功,無堅不摧,唯快不破」という映画のセリフは多くの中国武術の特徴を語っています。
速さは先手の保証であります。堅さは速さの延長線上にあるようなものになります。人間の肉体をなんとかして鍛えて、硬くする修練方は沢山ありますが、体が堅くなれば問題が起きる可能性も高くなることは自然界の不変の規律です。もちろん、人間の体の一部分が非常に速いスピードで移動するならば、人体の色々な組織に異変が起きることも変えられない自然です。
まして、かなり速い状態で何かに当たっていくのならば、人体の損害度が上がっていくことは、皆様の想像にお任せしたいと存じます。
太極拳の基本は「不丢不頂」です。日本武道の言い方ならば、「完全先手後手なし」になります。
この「不丢不頂」は太極拳の中でも最も習得しにくいものであり、一生涯をかけても相対的な「不丢不頂」を目指す修行になります。
理屈から説明すると、先手は出て行く際に体の欠点が現れ、後手は相手の攻撃を待つ一瞬で体が止まってしまう際に同じく体の欠点が出てきます。ならば、理想としているのは、「不丢不頂」になります。
しかし、このように人様の動きという生きている動作に完全に合わせて行くことの難しさは、長い間の太極修練をしていなければ、決して理解できないと思います。
少しでも「不丢不頂」状態に近づければ、推手の際に常に浮かされつつ、崩されつつ状態になります。
太極は他のどの武術ともまったく違う修練法ではなければなりません。よって、太極は他の武術の参考にも基本的にはならないと存じます。
すべての太極修練者はこの「不丢不頂」を少しでも理解できれば幸いです。
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