第275話 掤捋挤按雀尾生
- 2016/05/24
- 02:01

これは、「太極全体大用訣」の一句です。面白いことに30数年前に私がこの一句についての理解と今日の理解がかなり違っています。
今日になって、私が太極拳を学んでいる皆様に太極修練は一生涯かかってしまうと、偉そうに申し続けている立場になっておりますが、30年前の私ならまだ、師匠が自分自身の色々な技でも隠しているのではないかと適当に疑っていました・・・
ところで太極拳は本来、練習を重ねることで体内のエネルギー状態はかなり変わります。そして、一定の規律で分類されますが、一般的に最も基本的な太極勁は十三種類であると語られています。「掤捋挤按」は4種類の太極勁です。漢字四つが並んでいますが、「掤捋挤按」は実際にまったく無関係の経路が並んでおります。一部の太極拳流派は「掤捋挤按」を四正方角の勁として説明していますが、これも一理があります。しかし、太極勁が上級段階になったら四正も四隅もなく、360度全方位で勁が使えるはずです。
多くの太極拳流派も欄雀尾の中に色々な違う動きが含まれていますが、逆に呉式の欄雀尾は一番肝心な動きをなんと、体の95%が止まっているわけです。当然、このように体のほとんどが止まっていれば、「勁断意不断」への要求はかなり上がってきます。
世のすべての武術は、それほどに外面的な動き方をするのか、どれほどに内面的に相手の動きが受容できるのかで分かれます。
修行を経た人間であれば、武の感覚への理解力は共有できるはずです。修行を重ねてもなんとなく感覚が合わなければ、修練方法を考え直すしかありません。
太極の本来の感覚とは、外観的にほとんど動いていない状態で複数の太極勁が同時に使えます。こうなると、限られている動きの「掤捋挤按雀尾生」が正解に一番違いでしょう。
このような結論は30年前の私でしたらまったく理解できないでしょう。確かに同じ文書は何度も読みました。でも、今日のような感覚はありませんでした。師匠馬岳梁が言っていた、「太極は何も難しくない、難しいのが続けること」との名言は今日になってしみじみと身に染みます。
太極を続けてよかったです。これからも多くの方々と一緒に修行を続けて参ります。
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