第307話 太極の最も難しいこと
- 2016/06/25
- 00:02

太極修練の最も難しいことはおそらく、舎己従人になります。
呉公儀【太極拳講義】ではこのように書かれています。
舍己従人、是舍弃自己的主張、而依従他人動作、在太極拳中为最难能之事。因两人在交手之时、勝負之観念重、彼我决不相容、何况互相攻撃・・・
その意味ですが、舍己従人は自己の主張を捨てて、他人の動作に従うことです。これは太極拳の中で最も難しいことです。二人の人間が戦っていれば
勝負感はかなり重いでしょう。特に攻撃し合う時は、互いに絶対に譲らないはずです・・・
言い換えれば、戦う気持ちを持たないことが、私がいつも申している太極修練の際に頭を空っぽになるべきことになります。
頭が空っぽになることはどれほどに難しいでしょうか。このわたくしは五分でも太極の練習をすれば、生ビールやおかず、音楽鑑賞の誘惑や人生の艱難辛苦・・・実にありとあらゆるものが出てきます。
人間は自分自身を捨てることは本当に難しいことですね。
武術の界隈では、自分自身を捨てる武術はおそらく、太極のみですが、太極の最も難しさも、この武術が人間の一番の弱点に挑んでいることではないでしょうか。
わたくしが申している世界で最も太極修練にふさわしい民族が日本であることの証拠もここです。古いタイプの日本人は、自分自身を殺してもなんとか人様に合わせることに徹しています。
人の動作に同化し、人様の動作にこちらの動きが染み込める心の境地の修練が太極です。
これが当研究会の練習の最も明白な特徴でもあります。
スポンサーサイト