新天方夜譚物語第39話 太極も同じ

人間の体は大自然の微妙な変化や摂取するものの変化により、いとも簡単に崩れてしまうことを申して参りました。

私達が適当に強さを求める為に、適当に体を鍛えてしまえば、当然のように体を壊してしまいます。太極は特にそうです。太極はそれなりに繊細かつ内的な動きを求める為、一つの動きを適当にやってしまうことによって、内部の流れを詰まらせたり関節を怪我させたりして、もっとも処方的な健康効果でさえ得られないことも確認されております。

地元の団体が太極拳を練習した後、一生懸命に膝を叩いて、痛い痛いと言いながらこれから整体しに行くと言っていますね。私は何度も声をかけようと思ったのですが、日本の習慣としては知らない人に声をかけることは失礼に当たる為、遠慮致しましたね。

太極は穏やかな気持ちで、慌てずに、自分自身の体の状態をしっかりと把握し己の身体機能を越えない練習をすることが大切です。勿論、この点は指導者の立場の人間はもっと重い責任を背負っています。まあ、指導者としては一定レベルの医学知識、整体や鍼灸の経験も望ましいですね。勿論、最も大切なのは指導者自身も太極修練で成功をしていて、一定レベルの太極勁を有する者が望ましいです。

中国の太極商売化は、辛亥革命の頃から始まっていました。本物の太極門家元とそうではないものを区別する為に、今日でも複数の流派に於いて自分の流派だけの暗号を儲けています。当然、本物の家元流派に拝師している者しか知りません。

呉式家元にもこのような暗号があります。私は数十年に渡り色々な自称呉式の人に暗号をかわしたことがありますが、ほとんどの人は暗号を返していません。まあ、本物の呉式ではないですね。

当然、このような自称何々派の巨匠に太極理論を任せれば、当然のように色々と体に無理をかけてでも鍛えるわけでしょう。でも、これは、本来のあるべき太極拳とは、実に一線を画するものであります。

ならば、私は制定太極拳のスポーツ効果に一票を投じますね。どうせ、スポーツをすれば、若干の怪我は付き物の、中途半端な伝統太極拳よりは一層の運動効果が得られるのではないかと思います。

勿論、出鱈目な制定推手トーロや太極基本理論から反れる用法では、格闘技としては成り立ちません。

太極は人間の体の総合的な科学です。しっかりした正しい伝承の元で絶えず修行し、研究し続ける者のみ、太極拳を教える資格があると存じます。太極拳教室を選ばれる際はくれぐれもご注意ください。