第459話 虫一匹の懂勁
- 2016/11/24
- 00:16

一部の会員さんに人間の体は力を捨てれば、輪ゴムみたいというか、輪ゴムとまったく違って自然に伸びていくことを教えはじめています。当然、こうなると太極の動作はすべて、その原理の元で動くのが基本です。わかりやすくいえば、手足の伸び縮みと上げ下げも体の力を捨てることによる動作です。太極の動きは輪ゴムが自然に伸びたり、戻ったりするものです。
そして、違う角度からすると太極修練が使っている力は手足がギリギリ落ちなくて、なんとか宙に浮いているほどのもので十分です。上腕、前腕と手の重さを支えるのは、肩周りと前後上腕の筋肉、肘と手首周りの筋肉になります。
そして、先日のレッスンで私が皆様にこう話していたら、一人の会員さんはこうコメントしています。ならば、この状態で腕に虫でも留まったら重心が潰れるのではないでしょうかと、まあ、初心者なのになんと太極巨匠の王宗岳の太極拳論にそっくりではないですか。私ふその場で「王宗岳」は知っているかと尋ねると、会員さんは素直に知らないと答えたくれました。これ程の懂勁は私も人生ではじめてです。一瞬、世の中に本当に頭がよい人間がいると思いました。
しかし、私はこの会員さんをべた褒めはしませんでした。私はこのように太極を理解しているからです。
どんなに頭が良くても、どんな力持ちであっても、どんなに練習を頑張っていても、これで必ずしも最上級の太極勁を修得できるとは限らないです。人間は手足がギリギリ宙に浮いている程に全身の力を捨てて、更にその伸びていく動きが相手の動きの速さに合わせられる感覚は、IQも練習も、先天的または後天的な力もあったほうがよいですが、最も大切なのは、一人の人間はとしての一瞬のひらめきだと感じています。
皆様の太極修練に少しでも役立つアドバイスになるよう、私も修行を続けます。
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