第947話 相対的な強さ
- 2018/03/25
- 08:48

武人の基本と言ったら、誰にも勝てる自信を持たないことですが、それは何故、多くの太極拳家はできる限り人と手を合わせないことを習慣にしています。
格闘の基本は流派によって大きく分かれますが、勝つ人間の共通点と言えば、優しさがない者です。誰に対しても優しく接している者ならば、本当の格闘現場ではおそらく勝てません。他人に対して何も優しい気持ちを持たず、常に相手を怪我させる凶暴な気持ちがあれば、戦場などの本物の格闘の場では勝てます。
そうすると太極の最も難しいところと言えば、優しい気持ちでの格闘の強さではないかと思います。こうなれば、私なんかはまだ強さにはかなり遠いですが・・・
ただ、どんなに気持ちでは負けず、一刻も気持ちを緩まずに相手にかかっていく人間がいても、その人間の精神的な緊張もきっとかなりの高いレベルの者を維持して行かなければなりません。そして、例え強打で人を制しても、一人の人間の打で人を倒すことの衝撃と同様に、強打をした人間も同様の衝撃を受けることは物理学で知られています。これは、もはや武術ではなく、自然科学のコク一般的な常識であります。
更に、違う角度から申しますと、人に対する強打は、例え人に当たっていなくても自身の攻撃が一定の速度に達していれば、攻撃の振動もきっと自身の体内の臓器に伝わります。こうなれば内臓に慢性的な異変が生ずることも避けられないですね。

強さとは何かは実際に多くの人間によって議論されていますが、ネットの色々な評論を拝見していると、武術を練習している人間の感覚とそうではない人間の感覚が簡単にわかります。まあ、私は武術を練習している人間だからですね。
ところで、太極拳は何も発勁をしない慢架とかなり発勁する快架があります。発勁が全くない物は自身の体への振動もなく、相手からの抵抗もほとんどありません。発勁をする動作は例え、人の体に当たっていなくても、自身の振動は必ず自分の体のどこかを壊してしまいます。
例え、世界で最も強い一撃を手に入れても、その一撃が人に当たった時の反射と、突然の動きで我々の体に戻ってくる衝撃で体がボロボロになったら、これで強いと思われるのだろうかと、おそらくここで答えが別れます。
太極が思う強さは体が壊れないことと、相手への優しさが条件です。よって、太極で強くなることはけっこう難しいです。
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